東南アジアの新興諸国では,農薬や化学肥料の投入量の増大や都市化・混住化の進行に伴う生活系排水の増大により,農村地域や閉鎖性水域での水質汚濁が急速に拡がっています.高い農業生産性を維持しつつ,陸域から排出される汚濁負荷を削減するとともに,下流の閉鎖性水域の水環境保全を図ることが東南アジア新興諸国では喫緊の課題となっています.これに対して,流域圏における水質環境は,陸域上流から下流の閉鎖性内湾に至る流域圏の物質フロー系によって形成されるため,水質保全のためには,陸海域流域圏全体の水循環系と物質循環系を総合的に俯瞰する,いわゆる統合的な流域圏水環境管理が持続的な流域圏環境管理計画の策定において必要不可欠となります.

 本プロジェクトでは,ベトナム農業開発省の傘下にあり,地域密着型の研究教育を展開している水資源大学のハノイ校とホーチミン校のスタッフと連携し,深刻な水質汚濁が進行中の北部・紅河流域圏と南部・メコン川流域圏を対象に,流域圏水環境統合管理手法を開発するとともに,流域圏水環境に関する研究教育の拠点形成を目指します.3年間の取組で得られる成果は,東南アジア新興諸国の他流域圏にも活用可能であり,大きな学術的意義,波及効果が期待されています.

 本プロジェクトは,九州大学東アジア環境研究機構(RIEAE)の全面的支援の下,九州大学大学院農学研究院,九州大学熱帯農学研究センターの研究者を中心に実施されます.そのRIEAEが実施している東アジア環境ストラテジスト育成プログラム(EAESTP)を若手研究者の育成のために中核的に活用します.EAESTPは,東アジアの大学,国際研究機関,企業との連携のもと,講義,フィールド実習,インターンシップ,研究指導などから構成される環境問題に関する体系的なカリキュラムを提供する全学共通の大学院教育プログラム(副専攻プログラム)です.EAESTPと本申請課題が連携し,東南アジア新興国に共通の農業流域圏の水環境劣化の問題を抱えるベトナム紅河流域圏とメコン川流域圏を対象に,水環境統合管理を基本テーマとして,講義,フィールド実習や研究指導を実施します.これらのフィールド実習や研究指導には水資源大学の大学院生・若手研究者も参加し,日本人大学院生・若手研究者と協働で作業を実施することで,両大学の大学院生・若手研究者の国際感覚と実問題解決のための俯瞰的視野を醸成します.

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